当園の商品の甘味料は甜菜糖を使用しています。ここではパッションフルートと甜菜糖について薬剤師ライターTAKASANAさんに解説して頂きました。
パッションフルーツをスプーンですくったとき、あのトロピカルな香りが広がる瞬間が好きな方は多いと思います。そのままでもおいしい果物ですが、甜菜(てんさい)糖と組み合わせて使われることがあります。なぜ砂糖の中でも甜菜糖が選ばれるのでしょうか。
今回はパッションフルーツと甜菜糖、それぞれの特徴と組み合わせる意味について整理してみました。
1. パッションフルーツに含まれる主な栄養成分
パッションフルーツは果肉だけでなく、種子や果皮にも注目される成分が含まれています。
果肉にはカリウム・マグネシウム・葉酸・β-カロテンといった栄養素が含まれています[1]。
種子には食物繊維のほか[2]、ピセアタンノールというポリフェノールの一種も含まれており、近年研究が進んでいる成分です[3]。
果皮には水溶性食物繊維の一種であるペクチンや、抗酸化成分として知られるフラボノイド・ポリフェノール類などが含まれることが報告されており[4]、研究者からも注目されています。
2. 甜菜(てんさい)糖とは?
甜菜(てんさい)糖は、「てん菜」(ビートまたはさとう大根とも呼ばれます)を原料とする砂糖です。国内では北海道で生産されており、国産砂糖の主要な原料のひとつです[5]。
てんさいはショ糖を主成分としながら、セルロースやペクチンなどの食物繊維、たんぱく質、そしてオリゴ糖の一種であるラフィノースを含む作物です[6]。食物繊維は腸内環境を整える働きが知られており、ラフィノースもその働きを補う成分として注目されています。
ラフィノースは胃や小腸で消化吸収されずに大腸まで到達する難消化性オリゴ糖で、腸内の善玉菌であるビフィズス菌の栄養源となって増殖を促し、整腸作用が報告されています。また消化吸収されないためエネルギーになりにくい点も特徴のひとつです[7]。
甜菜糖はそのてんさいを原料としており、含蜜糖タイプでは天然のミネラルやラフィノースが残っていることも特徴のひとつです[6]。また、甘みはまろやかでコクがあり、上品な後味が特徴です。
ネット上では「GI値が低い」「血糖値が上がりにくい」という説明も見られますが、上白糖やグラニュー糖と同様に主成分はショ糖であり、糖質としての性質は一般的な砂糖と変わりません。
3. なぜパッションフルーツ果汁と甜菜糖を組み合わせるのか
酸味と甘みが引き立て合う組み合わせ
パッションフルーツの中でも「台農一号(たいのういちごう)」という品種は、香り豊かな甘酸っぱい果実です。そこにまろやかな甘味の甜菜糖を加えることで、酸味と甘みのバランスが整い、パッションフルーツ特有の爽やかな酸味とトロピカルな香りがより際立ちます。
また、甜菜糖のやさしい甘味はパッションフルーツの複雑な香気成分と相性がよく、グラニュー糖のようにシャープな甘さではなく、果汁に溶け込むような自然なまとまりが生まれます。甜菜糖は、ただ「甘さを足す」だけでなく、「素材のおいしさを引き出す調味料」としての役割も担っています。
素材選びに込められたこだわり
砂糖にはさまざまな種類がありますが、その中でもあえて甜菜糖を選ぶことには意味があります。上白糖やグラニュー糖が精製度の高いシンプルな甘さを持つのに対し、含蜜糖タイプの甜菜糖はてんさい由来のラフィノースや天然のミネラルを残したまま仕上げられています。甘みのバランスを整えるだけでなく、素材そのものの特徴を活かそうとする設計思想の表れとも考えられます。
パッションフルーツとの組み合わせによって特別な機能性が生まれるわけではありませんが、それぞれの原材料が持つ特徴を活かした組み合わせと言えると思います。
4. 薬剤師として感じたこと
パッションフルーツ果汁と甜菜糖という組み合わせを見たとき、味のバランスだけでなく、原料の選び方にも作り手の考え方が表れているように感じました。
食品の価値は、特定の成分の多さだけで決まるものではありません。どの原材料を選び、どのような味わいを目指したのかという設計そのものにも、商品の個性が現れます。
パッションフルーツと甜菜糖の組み合わせは、素材本来の風味を活かそうとするシンプルな設計の一例といえるでしょう。
まとめ
パッションフルーツと甜菜糖は、味の面でも成分の面でも自然にまとまる組み合わせです。
パッションフルーツの爽やかな酸味と華やかな香りに、甜菜糖のまろやかな甘みが加わることで、果実の個性が引き立てられます。製品によっては、ラフィノースや天然のミネラルを含む含蜜糖タイプの甜菜糖が使用されることもあり、素材そのものの特徴を活かそうとする設計思想が感じられる組み合わせです。
5. 摂取する際の注意点
甜菜糖の主成分は糖質です。パッションフルーツ果汁自体にも糖質が含まれているため、摂り過ぎには注意してください。特に血糖値が気になる方は、食事全体の糖質量の中で考えることが大切です。
参考文献
1. 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
2. Chau CF & Huang YL. Food
Chemistry, 85(2): 189-194,2004
3. Kitada M et al. Nutrients, 9(10):
E1142, 2017
4. Weyya Get al. Frontiers in Nutrition,11:1340511,2024
5. 農畜産業振興機構「砂糖の原料について~てん菜~」
6. 北海道開発局「北海道フードカタログ てんさい」
7. 日本甜菜製糖株式会社「ラフィノースFP 製品解説」

